うまいにんにくを作るために


一、「うまいにんにく」とは強く元気に育ったにんにくのことである
   ・地の利がもたらすもの
   ・スパルタな愛情がもたらすもの

二、「うまい」とは素材のみでは完結しない


うまいにんにくは生命力がみなぎり、タフでスパルタな愛情により鍛え上げらる。

「地の利」


  • 青森県田子町、言わずと知れたにんにくの品質日本一を謳う町であります。
    その品質の高さはその気候が鍛えます。

  • 寒暖の激しさ




  • にんにくの収穫は年に一度、秋に植え越冬し、夏に収穫されます。
    夏は35度、冬は-15度前後の田子町ですがこの寒暖差が次世代に種を保存しようという生命力を鍛え上げ、
    栄養価を蓄えより美味しい作物が出来上がります。




  • 適度な降雪




  • 寒さが厳しい田子町ですが、東北の真ん中を突っ切る奥羽山脈を背にした田子町は、冬は積雪1メートルほどです。
    降雪が多すぎれば春の訪れが遅れ、また少なすぎてはにんにくが寒風にさらされ、いずれでもにんにくの生育に影響します。
    田子からちょっと里に行っただけで気候は変わってくるので絶妙な位置にあるなと感じております。
    その田子町の適度な降雪が春先以降の成長を促進し、うまいにんにくに仕上げます。


     
  • 黒ぼくの土




  • 田子の土は火山灰土の黒ぼくの黒い土です。
    十和田湖の南東に位置する田子町ですが、十和田湖の大噴火の際に降り積もったこの黒ぼくの土は、関東ローム層などの赤土と違って肥沃な土壌とは言えません。 しかし、その黒ぼくこそがにんにくの細胞を引き締め身の詰まった、真っ白なにんにくに育てます。
     
     

    「スパルタな愛情」


    総じて、人間は楽する方向へ、うまいにんにくを追求すれば畑の管理はさほど重要ではなくなります。





  • 施肥による甘やかしはしない




  • 施肥による甘やかしはしない。
    にんにくは「畑の豚」と言われるほどに栄養を欲しがる作物です。
    収量を増やすために肥料を与えれば葉の色も青々とし一見元気そうなにんにくに仕上がり、個体の肥大が促進され収穫量は必然的にあがります。
    ただし、施肥をすることにより、根の張り具合はどうしても弱くなってしまいます。
    「値は根で決まる」
    という言葉もあるように、根の張り具合は重要で、土中に栄養がたくさんあれば根はその環境に甘えて細かい根を張らず、
    種の保存という植物の持つ本能と意欲を削いでしまうと考えております。
    私どもは通常より肥料の使用を控え、なるべくにんにくの生命力を刺激しようと試みております。
    その分、私の畑のにんにくは他のにんにくよりも葉の色は淡く、収量も少なめです。
    小さめ方が味は凝縮され、キメが細かく、香り高いのですが、
    ただ、小さければいいという問題でもなく「バランス」が重要です。

    うまいものを作りたい。


     

  • 種こそエリートを選りすぐる




  • にんにく作りは「土づくり」と「種選び」で9割型決まると思っております。
    翌年以降の「種選び」は既に植え付け後、発芽したくらいの段階から進められます。
    当方のにんにくは「ホワイト六片種」という品種です。
    ホワイト六片種といっても何百、何千種類といってもいいほど様々な特徴を持った種類があります。
    粒の大きさ、高さ、麟片数、葉の色、葉の大きさ・・・
    その種類の選定はどんなものを作りたいかという生産者の意思が反映されます。
    当方でも何種類か育てております。
    とにかく元気なものを選定するということが一番念頭に入れてますが、
    それ以外からの選定基準としては
    自然環境の変化に対応するためのリスクヘッジ(寒い年に強い、暑い年に強い等)及び、
    収穫期間が非常に限られるため早生系統と晩成系統の二系統で、且つ、黒にんにくに合うもの、飲食店向け等少し種類をかけて栽培しております。
    そういった意味でも、本当にいいにんにくとは、その種こそに真に価値があると言えるかもしれません。



     

  • 適期収穫の重要性と真意(元気なにんにくを作ればそれでよい)




  • 適期収穫とは、簡単にある時期に収穫するという意味ではありません。
    適期収穫までいかににんにくを元気な状態で維持できるかということです。
    畑に病気が蔓延して適期前に収穫するケースもあります。
    早くても遅くてもにんにくの品質そのものに影響がでます。
    気象条件による事情がないとは言えませんが、
    いずれにしても強く元気なにんにくに育て上げるということは、適期収穫するためには必須の条件になります。


     

  • にんにくは自身の鑑である




  • よく「美味しいにんにくの見分け方は?」と一般の方に尋ねられることがあります。
    しかし、スーパーで並んでいるようなにんにくの状態ではもはや私でも区別つきません。
    畑にあるにんにくの葉の状況や、どんな過程を経て作られたかなどを目でみて追わなければ良いにんにくとそうでないにんにくはわかりません。
    病気に侵されれば収穫前に葉が枯れて葉数が少なければにんにくの成熟度も違ってきます。
    にんにくの育ち方の考察が必要になってきますが、生産物は生産者の鑑だと思っております。
    ですから私は冒頭の問いに対しては「生産者をみて買って」と答えます。
    だからこそ、下手なにんにくは作りたくない、うまいものを食べてほしい、そういう気概で日々にんにく作りに励んでおります。




  • 有機資材の活用




  • にんにくの味にはバランスのとれた複雑さは必要だと考えておりますが、それは土壌中の多様性に起因すると思っております。

    土を肥沃にしていくため有機資材として「堆肥」の散布を行います。
    当方で使う堆肥は「ワラ堆肥」そして「馬糞堆肥」です。
    「ワラ堆肥」:自分のところで稲刈りをし終わったあと、散布前年の秋の段階で田んぼからワラを運んで刻んで発酵熟成させたものです。
    「馬糞堆肥」:この馬糞堆肥は、田子町に隣接する岩手県八幡平市「ジオファーム」産のものを使用しております。
    そもそもが馬糞堆肥は動物堆肥の中でも一番よいと言われておりますが、
    その中でも特にこだわりを持つジオファームさんのものを導入しております。
    何がいいかと言えば単純に馬は飼料ではなく藁や草しか食べず、繊維質豊富な馬糞は野菜栽培に非常に相性のいい堆肥です。
    それ以上に、他の下手な堆肥を使えば、土壌に雑菌が入り込み作物に悪影響をもたらす懸念がありますが、
    ジオファームさんの場合は馬糞の熟成管理が徹底されており、専用施設で完熟させ、有効微生物の活性と発酵熱による雑菌類の殺菌等細かいところに配慮し作られ、
    絶対の信頼と安心を持って使える有機資材だと思ってます。
    ちなみに機械で撒けばいいのですが、機械をまだ購入できずにいて手作業で撒いてます。笑
    地獄の作業です。笑

    「うまい」とは血の通った人付き合いが生むもの






  • 食をもって誰かに幸せを感じていただけるようなものを作りたい




  • 「美味しい」とはどういう人とどういう場所で食べるか、
    ということがかなり大きな比重を占めると思っております。
    苦手な人よりも、広い意味の愛情を育める人との空間での食事の方が美味しいと思えると思います。
    レストラン等取引先のお客さんに対しても、いかに私のストーリーが伝わるかも重要です。
    どんどん取引先に直接出向いてシェフやお客様との交流や、イベント開催など積極的なアプローチを心がけております。

    SNSの発展により人と繋がりやすくなりましたが、そこに本当の人の温もりは感じにくいと思っております。
    デジタルな現代だからこそアナログな向き合い方は本当に重要だと考えており、
    その考え方が今の一般のお客様やレストラン等の取引先との付き合い方に反映されております。
    私はリアルな付き合いを欲しております。
    そして、この人の作ったものだから食べたいと言ってもらえるような人間になりたいと思っております。